
ショートストーリーです。
【あらすじ】
ウォルターはディックの出張に付き添ってブリッジポートに滞在している。
その間、映画スタジオでバイトをすることにしていた。
「なんとなく面白そう」という軽い気持ちで始めた仕事。
ディックの仕事が落ち着けばアルパインに戻る予定。
時間や経歴上、自分がやれることは限られていると割り切って雑務をこなす日々。
スタジオのスタッフは皆、経験のあるプロばかり。
休み時間に交わす会話は有意義な内容で飽きない。
しかし、仕事の立場上、温度差を感じた。
彼らと自分は違う世界の人間だと思う。
時々、相手の話に合わせるのがしんどい。
表面的な態度をとる自分に疲れを感じてきていたウォルターはディックに心境を伝え疲れを癒したかった。

「ねぇディックさん・・・」
「ん?」
二度ほど行為を終えてディックとウォルターはベッドで横になっていた。
「ディックさんは、会社の人たちと雑談ってする?プライベートな話とか。」
「昔は休み時間に同僚の子たちと話すことはあったよ。
でも昇進していくうちに減っていったかなぁ。
部署が変わって人間関係も変わると話せる相手も減るしね。
上にいくほど腹の探り合いしかしなくなったよ。笑
何かあった?」
「いや、ちょっとね。スタジオで出会った人たちと絡むときに少し馴染めなくて。
割とクリエイティブな人が集まる世界だからみんな能力あって個性が魅力的で。
創作意欲っていうの?熱意もあって、チームワークが取れてるんだ。
明るい雰囲気で面白くて楽しいの。」
同じ目標を持つ優秀な人材が集まる職場で良さそうだと思ったがディックは黙って続きを聞いた。
「みんな雰囲気良いから、時々疲れるんだ。
俺ってブリッジポートに居る間だけやってる半端者じゃん?ちょっと場違いだな、とか。
そもそも才能も経験もないし。だからあんまり関わらないようにしてたのね。
仕事に支障出ない程度に。」
確かにウォルターの立場だと引け目に感じることもあるだろうなとディックは思った。
「キャリアの差や立場は仕方ないとして、俺は自分ができる限り仕事頑張ってるけどさ。
休憩の時に結構絡んでくれるんだ。その人たち。」
「うん。」
「作品作りのこだわりとかノウハウとか、有意義な話で面白いんだけどね。
でも温度差を感じるの。
俺は創作とかしたことないから、言われてもピンとこない話だったり、関心ない話とかもあるしさ。
聞いててたまにどうでもよくなることがあるんだ。
けど、相手に合わせて表面的な態度を取っちゃうんだ。それが疲れるの。」
「ウォルター君は八方美人なところあるからね。
相手に合わせて調子よく話しちゃうんだね。」
そんなところが可愛いくて好きだなと頭の中で微笑みながらディックはウォルターの頭を撫でた。
「相手もさ、無理に聞いてもらうつもりもないだろうし、
話に飽きたら飽きたって言っても気にしないと思うんだよ。子どもじゃないからさ。
遠慮なんて、しなくていいんだろうけど。
でもそこまで人間関係できてないって思って。俺入ったばかりの奴だし。
知人以上の同僚との付き合いって距離感難しい、っていう弱音・・・です。」
職場の人間関係が特に問題なくても、関係が浅いせいで生まれる悩みもある。
気にすることないと解っていても、毎日積もる違和感にストレスを感じるようになっていた。
口に出すだけで気持ちが救われる問題だと思ったから、遠慮も含めて弱音という言葉でまとめた。
「いろいろ、細かいところまで気にしてるんだね。お疲れ様。」
ディックはそう言って再びウォルターの頭を撫でる。
つかれた~と駄々をこねるようにウォルターは頭を押し付けた。
「確かに付き合いが浅い人とのおしゃべりは表面的なものしか見えないことが多いね。
でも、それは本当に相手のことが見えてないだけで、お互い様だったりする。
誰だって何かしら抱えてるし、人のことが解らないわけじゃないよ。
“自分のことを理解してくれない人間だ”ってこちらから壁を作る必要はないんじゃないかな。」
「“気を遣う”も壁を作ってるのと同じかな?」
「相手に合わせて八方美人になっちゃうことは気を遣ってるって言うのかな?」
「言わない?」
「僕から言わせてみれば気を遣ってるとは思わない。どちらかというと自己満足じゃないかな。」
「厳しいな。笑」
相手に合わせた態度を取ること。
相手のためと思いながら結果的に自分が嫌われない行動を取っているとも言える、と気付かされた。
自己満足は言い過ぎじゃないかとも思ったが。
「ディックさん、俺、もうちょい素直になるよ。」
「うん。人間関係が浅くても遠慮しなくていいことって意外とあるよ。
ある程度割り切って、ある程度相手に委ねて。自分も気楽に。
気を遣われない方が嬉しい場合もあるしね。」
「ありがと。無理すんのは誰のためにもならないね。あ~話してよかった。」
「話聞いて職場の人がいい人ばかりなのも伝わったし、ウォルター君ならきっとうまくやれるよ。
でも、他の人と仕事以上に仲良くなりすぎないでね。」
できたらほどほどにして、と囁きながら片足を絡めてウォルターの体を押さえ込んだ。
「?」
「聞いててずっと可愛いなって思ってた。
ウォルター君は人のことよく見てる、よく考えてるね。
情けない話だけどちょっと嫉妬した。
あんまり、他人のことで悩んでほしくないなって。」
そんなことで嫉妬するのか、とベタな台詞を真顔で言われて顔が熱くなった。
(くそ恥ずかしい。)
けど、久しぶりにゆっくり話せたことが嬉しかった。
独占欲を突然表現されて驚いたけど、それも嬉しい。
自分も素直に返すことにした。
おしまい

【あとがき】
ディックさんとウォルターのいちゃいちゃでした。
時間を置いた後に読み返し、相変わらず甘い二人だな~と思いました。(特に最後)
この二人らしくて好きだとニヤニヤする時と、
甘すぎて恥ずかしいwって、気持ちが離れるような感覚になる時があります。笑
(その両方を抱く時もある)
久しぶりに二人の会話を書けて楽しかったです。
ウォルターはなんだかんだ繊細でうじうじしやすくて、
ディックさんは合理的でやや説教臭い、ウォルターにだけ包容力拡大。
甘え上手なウォルターだけど、内面ではディックさんの方がウォルターに甘えてる。
そんな設定を形にできてるといいな。
毎度平和的解決をするからたまには喧嘩してほしいですね。
けど、この二人は喧嘩にはならないだろうな。
意見が合わず衝突したり、揉めることがあっても、感情的になることはなさそう。
ディックさんが議論を持ち掛けて、ウォルターが割り切って応対する。
お互い納得して治まりそう。(つまらん)
2枚目のSSは、海外のブロガーさんがオリジナルストーリーで作られていたポーズの中から頂戴してきたものです。
二人の配置を若干ずらして使ってるんですが、とにかく体の絡み方が気に入ってます。
ディックさんがウォルターに絡めた左足。
ウォルターがディックさんの右手に重ねた左手(指輪もポイント)。
拡大して見てください💗
最後3枚目のSSは、ブリッジポートでやっておきたかったことです。
都会の夜景を見ながらの立ちバッk(あるある)!笑
絶景って言葉が使われそうなシチュエーション。やってみたかった。
以上です。ここまで読んでくれてありがとうございましたっ💖😁