


(ここがリアくんの家。また新しい街に引っ越してたのね。)
結婚して家庭を持って幸せに暮らしている様子が目に浮かぶ。
小さい頃から自分の分身のように想っていた弟。
あたしのいない世界で別の男と幸せな人生を送っている。

(どう責任を取ってもらおうかしら。)
今まで抱えていた問題と対峙する時がきた。
長く目を背けていたのに、こんなに簡単に彼を訪ねることができるなんて。
本当はこの場に立っているのがやっとというほど現実と向き合うのが怖い。
あまりにも考えすぎて頭がおかしくなったのかもしれない。
自分の行動に驚いている。
「あの、うちに何か用ですか?」
「!」

「そこは僕の実家です。先日一人暮らしをするために出たばかりですが。
ええと、両親に用があるんですよね?実は今、旅行に出かけてて不在なんです。
僕でよかったらご用件を伺いますけど。」
突然声をかけられて驚くのと同時に、目の前の青年の姿に違和感を覚えた。
弟と似た雰囲気を感じる。
彼の言葉を理解するのに時間がかかった。

「あの、あなたはもしかしてリア・クライスの息子・・・とか?」
「はい、そうです。父ちゃ、父のお知り合いなんですね?」
「ええ。知り合いというか、リア君の兄なの。」

「アタシはあなたのお父さんの兄。ラン・クライスよ。」
「父ちゃんのお兄さん?」
不思議と彼の姿に安心して、そのまま名乗ってしまった。
好きな人の子が目の前に現れた。
戸惑うはずなのに、その存在を素直に受け入れている。
会ったばかりということを忘れて彼に心を開きたくなった。

「会えてうれしいです。
ここで待っても父ちゃんたちしばらく帰ってこないので、僕の家に来てください。
そこでゆっくり話しましょう。」
「え、ええ。」

孤独から解放されるために弟を訪ねて、訪ねた先で弟の息子と会った。
出会ったばかりの彼に己の何かを委ねたいと感じている。
(人生、何が起こるか分からないものね。)