「悪いなニケ、突然のことで意味が解らなかっただろう。」
「うん。ランさんは大丈夫かな?」
「心配はいらねえよ。兄ちゃんは不器用なだけなんだ。かなり歪んでしまってはいるけど。」
父ちゃんはそのまま幼少期の話をし始めた。
ランさんが父ちゃんに責任を求めたがるのは親の影響が関係しているかもしれないそうだ。
ランさんと父ちゃんの親(僕の祖父母でもある)は、子どもに愛情を注ぐことが下手だったらしい。
厳しくてあまり褒めることをせず、早い自立を求めたそうだ。
父ちゃんは甘えた記憶がないらしい。
ランさんは、親に認めてもらえるように頑張っていたらしい。
けれどなかなか理解されず、いつも寂しそうにしていたそうだ。
「兄ちゃんは純粋な人なんだ。
否定されたら真に受けて自信を無くす。周りにすぐ影響されて自分がなかった。
自立を履き違えて人に頼れない性格で何でも抱え込むんだよ。
俺は友達と過ごすことが多かったから親の教育はあまり影響なくてさ。
不器用で脆い兄ちゃんが心配だった。」
「ランさんは幼い頃から自分を受け入れてもらえないまま大人になってしまったんだな。
純粋で繊細な子どもの心が親からの抑圧で歪んでしまったんだろう。
甘えられない寂しさと自分を理解されない苦しみをずっと抱えたままだったんだな。
リアだけが唯一の理解者で頼れる存在だったのか。」
「多分な。」
「ランさんにとって父ちゃんは側にいてほしい存在だったんだね。
だから家を出たことや結婚したことに怒ってたんだ。」
「状況を整理するとそう考えられるな。
問題は俺に責任を取ってほしいと感じてしまっている部分だ。
兄ちゃんは俺に依存することで自分の辛さを解決しようと、できると思い込んでいる。」
「ランさんともう少し話をしてみるよ。」
「兄ちゃんのこと頼んでいいか?あの様子だと俺が行っても難しそうだ。
あの家に入っていったってことは、お前には気を許してるらしいな。」
「どうかな。分からないけど、任せて。」
「ありがとな。あと、何かあったらいつでも連絡していいと伝えておいてくれ。
これからは俺たちもっとコミュニケーションを取ろうと思う。」
「うん。分かった。」
父ちゃんたちは僕にランさんのことを任せて家に帰った。